メディアプロジェクト「攻殻機動隊 M.M.A. – Messed Mesh Ambitions_」特集#04、公開
《攻殻機動隊》シリーズが提示してきた数多くの先駆的な「問い」を積極的に継承しながら、現代社会が抱える様々な主題について思索・議論するためのメディアプロジェクト「攻殻機動隊 M.M.A. – Messed Mesh Ambitions_」。
第4回目のテーマは「分散|Variance」。今回はこれまでとは異なり、監修者を置いておらず、編集部のメンバーが各企画を構成している。
「今日はツイてるなあ!」。無邪気にパチンコに興じる高齢者たちの電脳を借りて、イシカワたちはシステムの維持を図る。「あんなジイさんたちでも、並列化すればパワーは稼げるからな」。
『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の第21話「置き去りの軌跡 ERASER」で挿入される何気ないワンシーンは、さながら仮想通貨の採掘に人々のコンピュータを勝手に利用する「クリプトジャッキング」を思わせる。しかし、それはここに描かれたSF的想像力を矮小化した連想に過ぎない。電脳によってすべてがつながるとき、社会は、人々は、生活は、際限なく“合理的”に分散してゆく。では、情報空間からも都市空間からもこぼれ落ちるものたちは、一体どこへ向かうのだろうか。
ここでは脱中央集権(decentralized)やシステムの脱集中(distributed)に収まらない「分散」の可能性を考えてみたい。内容は以下の通り。都市史研究者の林憲吾による、《攻殻機動隊》都市風景論。神経科学者の濵田太陽は、Web3や神経科学の周辺に起こる技術・運動・思想の先にある分散型社会の実像を探った。デザイナーの藤吉賢は、来るべき高齢化社会における当事者性について、ヨーロッパのインクルーシブデザインの諸事例から考える。自身の飼い犬であるシーズーをはじめ、人間とあらゆる異種との関係性に想いを巡らせた異常論文は、作家・デザイナーの青山新によるもの。最後に、宗教人類学者の藤野陽平は、台湾の柔軟かつ多様な民間信仰のあり方を通じて「ゴースト」概念に新たな光を当てる。
「攻殻機動隊 M.M.A. – Messed Mesh Ambitions_」の特集#04「分散|Variance」はこちら。
図版_八木幣二郎[Heijiro Yagi]