© 士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会
© Shirow Masamune, Production I.G/KODANSHA/GITS2045

KODANSHA
2024.10.28M.M.A.
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ISSUE #04

特集_分散|Variance

「今日はツイてるなあ!」。無邪気にパチンコに興じる高齢者たちの電脳を借りて、イシカワたちはシステムの維持を図る。「あんなジイさんたちでも、並列化すればパワーは稼げるからな」。

『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の第21話「置き去りの軌跡 ERASER」で挿入される何気ないワンシーンは、さながら仮想通貨の採掘に人々のコンピュータを勝手に利用する「クリプトジャッキング」を思わせる。しかし、それはここに描かれたSF的想像力を矮小化した連想に過ぎない。電脳によってすべてがつながるとき、社会は、人々は、生活は、際限なく“合理的”に分散してゆく。では、情報空間からも都市空間からもこぼれ落ちるものたちは、一体どこへ向かうのだろうか。

ここでは脱中央集権(decentralized)やシステムの脱集中(distributed)に収まらない「分散」の可能性を考えてみたい。内容は以下の通り。都市史研究者の林憲吾による、《攻殻機動隊》都市風景論。神経科学者の濵田太陽は、Web3や神経科学の周辺に起こる技術・運動・思想の先にある分散型社会の実像を探った。デザイナーの藤吉賢は、来るべき高齢化社会における当事者性について、ヨーロッパのインクルーシブデザインの諸事例から考える。自身の飼い犬であるシーズーをはじめ、人間とあらゆる異種との関係性に想いを巡らせた異常論文は、作家・デザイナーの青山新によるもの。最後に、宗教人類学者の藤野陽平は、台湾の柔軟かつ多様な民間信仰のあり方を通じて「ゴースト」概念に新たな光を当てる。

特集#04「分散|Variance」は、これまでとは異なり、監修者を置いていない。編集部のメンバーが四方八方へ散らばって、各企画を構成している。

図版_八木幣二郎[Heijiro Yagi]