© 士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会
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KODANSHA
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2025.01.20Article
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M.M.A. -Massive Mesh Ambitions- 特集#03/小久保智淳「“ゴースト”の境界線を探して──私が私でいられる保障とは何か?」

『攻殻機動隊』を思索・議論するメディアプロジェクト「M.M.A. -Massive Mesh Ambitions-」。

 

特集#03のテーマは「境界線|Boundaries」。監修を務めるのは、これまで技術の進化と社会の変容をともに論じてきた法哲学者・大屋雄裕。

 

「“ゴースト”の境界線を探して──私が私でいられる保障とは何か?」では、神経科学と法学の融合領域たる「神経法学」を研究する小久保智淳が執筆。

 

“ゴーストハック”はもはやSF的想像力の産物ではない。

 

神経系を情報システムとみなし、脳と機械を接続する「Brain-Machine Interface」(BMI)は、すでに機械による身体機能の代替や、VR空間上でのアバター操作を可能にした。やがては、他者の脳や外部記憶装置との接続もまた、可能になるかもしれない。身体の拡張から心の拡張へと、その足取りは加速している。

 

言うまでもなく、こうした技術の発展は、身体や心の境界線を揺るがすリスクを孕む。どこからどこまでが物理的な自己であるか、精神的な自己であるか。これまで自明であった境界線は、曖昧で、不安定なものになるだろう。

 

小久保は、《攻殻機動隊》シリーズを読み解きながら、このような問いと対峙する。“義体化”と“電脳化”が進んだ世界で草薙素子が抱える実存的な不安は、筆者にとって切迫したリアリティをもっているからだ。

 

小久保の探究は、神経法学において提起された概念「認知過程の自由」を緒に進められる。それは神経系が操作され、あるいは接続される未来において、その恩恵を享受しながら、同時に、人格の固有性と同一性を確保しようとするものだ。

 

“ゴーストライン”はどこに引かれるだろうか。

 

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