M.M.A. -Massive Mesh Ambitions- 特集#02/村上久「『徹底的な混乱』を手懐ける──ズレのある身体としての群れ、あるいは群れとしての身体をめぐって」英語版も公開
『攻殻機動隊』を思索・議論するメディアプロジェクト「M.M.A. -Massive Mesh Ambitions-」。
特集#02のテーマは「アウトロー|Outlaw」。
村上久「『徹底的な混乱』を手懐ける──ズレのある身体としての群れ、あるいは群れとしての身体をめぐって」の英語版も公開しました。
ムンバイ中心部の市街地をリキシャの後部座席に乗って移動したことがある方なら、走行する自動車たちが織り成す、ともすればカオティックとも評したくなるような複雑な道路交通システムに、目眩を覚えた経験があるはずだ。車間距離という概念が存在しないかのような密集度、唐突な車線変更や割り込み、4車線に設定されている道に発生する6車線分の車列。日本人の感覚では事故寸前の混沌の中、現地のドライバーたちはみな涼しい顔のままギリギリで事故を回避していく(もちろん統計的には事故はそれなりに起きてはいる)。一見まるで協調性がないように見えて、しかしこれはこれでひとつのまとまりをなしているらしい。そんな摩訶不思議な光景を前にすれば、おのずと疑問を抱かずにはいられない。
なぜこんなことが可能なのか?
動物の「群れ」の動態を数理モデルによって分析する村上久は、この「なぜ」に対してひとつの有力な回答を提示してくれる。個体がダイナミクスを有する「群れ」となるために欠かせないものとは何か? 群れの外から加えられるゆらぎに耐えられるだけのまとまりではなく、群れの中で発生するゆらぎを群れの必要条件として解したとき、きっと6車線分の混沌に潜む秩序の影が仄見えるだろう。アウトロー組織「公安9課」も、その例外ではない。
「美は乱調にあり」と大杉栄は言う。然るに村上ならこう言うかもしれない。「秩序は混沌にあり」。