M.M.A. -Massive Mesh Ambitions- 特集#02/小澤京子「空隙のリベルタン──都市と身体の法-外の場」英語版も公開
『攻殻機動隊』を思索・議論するメディアプロジェクト「M.M.A. -Massive Mesh Ambitions-」。
特集#02のテーマは「アウトロー|Outlaw」。
小澤京子「空隙のリベルタン──都市と身体の法-外の場」の英語版も公開しました。
「はるかな迷路のひだを通り抜けて、とうとうお前がやってきた」
これは草薙素子少佐との苛烈きわまる電脳戦の末に追い詰められた天才ゴーストハッカーが不敵さを滲ませつつ漏らした窮鼠の独白──ではなく、小説家・安部公房がものし、その後、勅使河原宏によって映画化された不朽の名作小説『他人の顔』の、冒頭の一文である。
ひだ(襞)──。都市や建築を主な専門領域としながら、その「イケメン」論、「ビジュアル系」論などにおいても知られる美術史家・小澤京子の思索は、「ひだ」へとつねに向けられてきたようにも思われる。小澤が今回、《攻殻機動隊》の「はるかな迷路のひだ」を通り抜けて向かったのは、作品に登場する(ニューポートシティや択捉経済特区のチャイナタウンなどの)都市、そして(テクノロジーと緊密に接続した「ポストヒューマン的」な)身体に潜む法-外な空隙、「内部に折り込まれた辺境」である。
言わずと知れた安部公房の記念碑的随筆の表題でもある「内なる辺境」が生成する束の間のリベルティナージュ。それは、テクノロジーにつきもののアウトロー性とも絡まりあい、《攻殻機動隊》の世界に様々な事故を引き起こす。トラブルを得た物語は、性懲りもなくアウトローへと舵を切る。
さしずめ本稿は、すでに燃えつきた地図を携え、物語にはまだ届かない「辺境」を尋ね彷徨った、(思弁的な)散策の記録とでも言おうか。