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KODANSHA
攻殻機動隊 M.M.A. - Messed Mesh Ambitions_ 特集_東洋的|The East ISSUE#1
2023.10.26M.M.A.
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ISSUE #01

特集_東洋的|The East

主人公・草薙素子と人形使いの融合、それによって変容する身体。原作漫画および映画版第一作で描かれた、生命・情報・技術が高次に溶け合った社会の必然的な産物としての素子の姿は、その後続く《攻殻機動隊》シリーズのもっとも重要な主題のひとつを象徴している。本特集では、西洋由来の人工知能(AI)を中心とする新しいテクノロジーが、いかにして私たちの身体と社会に影響をもたらすのか、反対に、文化や環境がどのように技術を変質させるのか、それらの問題系に「東洋的」な想像力を衝突させることで揺さぶりをかけようと企むものである。

内容は以下のとおり。AI研究者の三宅陽一郎は、西洋の哲学や宗教観に基づくAI観が根づかない土壌としての東洋に、オルタナティブだがしかし決定的な創出の契機があると説く。日本の情報通信政策に官僚として携わってきた西山圭太は、「マルコフ・ブランケット」モデルから着想を得た生命・情報・物質を貫く独自の宇宙論を、自身の公的実践や国外の事例を織り交ぜながら展開する。アーティスト・近藤銀河と哲学者・西條玲奈、メディア研究者・清水知子の鼎談は、多様なコミュニティの記憶を継承し、偶然性と複数性に向けて社会をひらくテクノロジーとしてAIを位置づける。能楽師・安田登と批評家・浜崎洋介の対談では、近代以前・以後にみられる日本のことばや儀礼、霊的感覚の変遷を追いながら、現代の都市生活者たちの宙吊りになった身体性をいかにして奪還できるのかを問う。

特集#01「東洋的|The East」の監修を務めるのは、2021年に『攻殻機動隊論』(作品社)を上梓した批評家・藤田直哉。ローカルでオルタナティブなAI像と、来るべき多元的な未来を展望する。

図版_八木幣二郎[Heijiro Yagi]

藤田直哉ふじた・なおや/批評家。日本映画大学准教授。1983年、札幌生まれ。東京工業大学社会理工学研究科価値システム専攻修了。博士(学術)。著書に『虚構内存在』『シン・ゴジラ論』『攻殻機動隊論』『新海誠論』(以上、作品社)、『新世紀ゾンビ論』(筑摩書房)、『娯楽としての炎上』(南雲堂)、『シン・エヴァンゲリオン論』(河出新書)、『ゲームが教える世界の論点』(集英社)、『百田尚樹をぜんぶ読む』(杉田俊介との共著、集英社新書)ほか。